【小説紹介】9S〈ナインエス〉(電撃文庫)
9S<ナインエス>(葉山透)(電撃文庫)
◎この作品について
SF小説(ライトノベル)になります。そこまで難解な設定が出てくるわけではないので、SF的なギミックを楽しみたい方にオススメです。
書い人も完全に読めたわけではありませんが、興味を惹(ひ)かれている作品になります(買ってから大分時間が経過しているのは内緒、内緒になってませんが)。
タイトルの由来は、Wikipediaによりますと、"The Security System that Seals the Savage Science Smartly by its Supreme Sagacity and Strength."の略で、Sが9つ付いていることに由来します。
なお直訳すると「その最高の賢明さおよび強さによって野蛮な科学を巧妙に封印するセキュリティ・システム」、とのことです。
◎作品の設定
○峰島勇次郎(みねしまゆうじろう)
とんでもない天才(存命中)で、彼が残した(科学)技術は『遺産』と呼ばれ、その性能差によって(?)アルファベットでランク分けされています(遺産ランクEなど)。
○峰島由宇(ゆう)
峰島勇次郎の娘で、とてつもなく高い知能を持つ。彼女も『遺産』の1つで、ランクはS(おそらく最高ランク?)。
作中では、自身や相手(対象物)の物理演算を行い、極めて高い身体能力を発揮するなどをしています(他にもいろいろやっているんですが、本編を読んだ方が明らかに理解が早いでしょうから割愛します)。
○坂上闘真(さかがみとうま)
主人公です。割のいいバイト、ということでスフィアラボで仕事(アルバイト)をしていますが、今回の事件に巻き込まれます。
実はかなりの秘密(戦闘能力、というかそれ系の遺伝子)を持っています。
○スフィアラボ
1巻の舞台となるのが『完全閉鎖型での自然環境の循環を再現した研究所』、スフィアラボです。直径525メートルで、海洋に浮かぶガラス玉のような外観をしているとのこと。
地球は万物が流転(るてん)して環境が巡っていますが、それを狭い町くらいの規模で再現したのがスフィアラボです。
○真目(まなめ)家
峰島の技術を一切使わない一族で、主人公の血族でもあります。
1巻だけを多少読んだ限りではわかりませんが、かなりの権力などをもつ財閥か、大企業みたいな組織、一族なんですかね。
○蜃気楼(ミラージュ)
スフィアラボを襲撃したテロリスト・グループ(正確には強奪グループ?)です。
『遺産』の技術を用い、スフィアラボの『遺産』を狙います(多分。そのはず)。
◎作品の読み方、ポイントなど
○けっこう視点が切り替わり(三人称)、登場人物も多く、展開も激しい
項目通り、三人称(いわゆる『神の視点』)で話は展開されますので、細かい設定が出てくるこの作品ではベストの書き方でしょう(偉そう?)。
登場人物がわりと細かく、一見すると誰が重要人物なのか分かり辛い印象を持ちます。同時に場面(の展開)が細かいというか激しく分散するように切り替わるためこれまた読み辛い部分がありました。
SF的な設定、ギミックもやはりたびたび細かく分散して登場し覚えながら読んでいくが少し大変というか億劫(おっくう)です(正直者)。
構成上の問題ですかね。大作と言って差し支えない内容ですので、執筆するのはさぞかし大変だったんじゃないかなーと思っています。
○SFギミックが豊富で楽しい
本当にたくさんのSFギミックが出てきます。元ネタが知りたい……。
自分もこれくらいまで勉強したいなあ、と思わざるを得ません。
スフィアラボの閉鎖環境に関する科学(SF、でも未来にはありそう)技術や、戦闘で使われる『遺産』技術や、峰島由宇の超人的な演算力からくる身体能力など、枚挙にいとまがありません。説明もその都度、的確に行われるため、難しすぎるということはないはずです。
◎まとめ
SFはライトノベルではウケないから新人賞では落とされることが多い(出版元、レーベルによっては問答無用で審査対象にしないところもあるそうです)らしいのですが、こういったSF作品がちゃんとヒットを飛ばしたのは軽い驚きと共に嬉しい出来事でもあります。
SF以外にもいろいろな要素がごちゃまぜになった作品ですが、中途半端ではなく、どれもしっかり描き切った印象があります。
続刊もたくさん出ている、書い人も持っているのでもしかしたら2巻以降も紹介するかもしれません。