【小説紹介】されど罪人は竜と踊る Dances with the Dragons(ガガガ文庫)
されど罪人は竜と踊る Dances with the Dragons ガガガ文庫(著:浅井ラボ)
◎この作品について
自分が一番好きなライトノベル・小説シリーズです。作家としても一番好きかな。
◎見どころ
- ○咒式(じゅしき)のある世界
- ○主人公ガユスともう1人の主人公ギギナのバディ物
- ○咒式について
- ○咒式以外の科学文明について
- ○〈異貌(いぼう)のものども〉について
- ○竜族
- ○あまりカタカナ言葉を使用しない作風
- ◎1巻あらすじなど(ネタバレあり)
- ◎感想など
○咒式(じゅしき)のある世界
この世界には超科学とも魔法ともつかない咒式という方程式(?)が存在します。
作用量子(プランク)定数h(←実在する定数です。量子力学の基本みたいですね)を操作し、局所的に物理法則を変異させ、TNT爆薬や毒ガスを生み、プラズマや核融合など途方もない物理現象を巻き起こす方程式、とあらすじにはあります。
主に戦闘に使用される咒式を攻性咒式(こうせいじゅしき)といい、軍などに所属しない市井(しせい)、在野の咒式士のことは攻性咒式士と呼ばれています。
主人公たちもそんな攻性咒式士たちの1人であり、かなりの腕利きです。
○主人公ガユスともう1人の主人公ギギナのバディ物
ひねくれ者で隠れ努力家のガユスと、美貌だが闘争くらいにしか興味のないギギナの相性最悪で最高のコンビが織り成す物語です。
○咒式について
咒式には1~7までのランクがあり、1が最低で7が最高(後に『戦略級』や超階位まであることが判明する)。
化学系、生体系、電磁系、重力系、数法系、超定理系(次元などに関連したものが多い)の6種類ありますが、さらに同じ化学などでも、化学『錬成』系や化学『鋼成』系など細かく分けられています。
咒式は約200種類くらい出てきます(全巻通しての種類数)。
ちなみに咒式の名前はレメゲトンという悪魔の名前から取られたものが多いです。
例えば、化学鋼成系第一階位は〈ベリン〉(鋼の槍を火薬?で発射する。由来は悪魔じゃなくて槍のジャ『ベリン』?)。
化学錬成第三階位は〈アイニ〉で空中にTNT(トリニトロトルエン)爆薬(いわゆるプラスチック・可塑性爆薬ですね)を生み出し爆破します。
生体強化系第五階位はギギナの必殺技の〈バー・エルク〉。筋肉を増強し、脳のリミッターを外すことで限界かそれ以上の怪力を発揮します。
化学錬成系(最高)第七階位は禁忌咒式(禁咒)の〈パー・イー・モーン〉。
核融合の炎を放射するガユスの必殺技です。法的に厳重に禁止されているので、使用後に裁判沙汰になる話もありました。
○咒式以外の科学文明について
科学文明も非常に発達しており、人間と見分けのつかないアンドロイドのような『擬人(クンスツ)』や、立体光学(ホログラム)映像などが日常的に存在します。
○〈異貌(いぼう)のものども〉について
され竜世界には人と同等かそれ以上の知性や戦闘力を持つ『竜』や『禍つ式(まがつしき・アルコーン)』(さらに上位種の大禍つ式はアイオーンと読みます)、『古き巨人(エノルム)』が存在し、他にも咒式を操る亜人族なども存在します。
○竜族
強大な咒力を持ってはいるが、悪を為せないがために人類(人族)の後塵を拝することになった種族と言われています。
腕などを切られても恒常的に発動している治癒咒式でものの数秒で再生したりします。
各竜種族専用の咒式に『死の吐息(といき)』というものがあり、強酸や溶解・沸騰した金属などを吐き出します。
他にもさまざまな咒式を多用する、隙のない種族です。弱点は人間の邪悪さ? なのかな。書いていて悲しいけど。
○あまりカタカナ言葉を使用しない作風
バイクを単車と表記したり、コーヒーを珈琲と書いたりするのが本作の特徴(作風)の1つです。別の(され竜以外の)作品では普通にカタカナ言葉は使用しているので、雰囲気作りでしょう。ただし、咒式名は漢字にカタカナのルビ(読みがな)を振っています。
◎1巻あらすじなど(ネタバレあり)
2大大国の緩衝都市のエリダナに生き、いつも経営難に喘(あえ)ぐガユスとギギナ2人だけの攻性咒式事務所。
なんとか準〈長命竜〉(じゅん・アルター、900歳くらいの強大な竜)を倒したガユスとギギナだったが、それが発端(ほったん)でとんでもない陰謀劇に巻き込まれることに。
舞台となる大陸(ウコウト大陸)でも2番目の大国である『ツェベルン龍皇国』。
その皇室の最重要人物の1人であり、枢機卿(すうきけい)長など多くの肩書きを持つモルディーン・オージェス・ギュネイの護衛任務をガユスの昔の学友、ヘロデルから依頼される。
当然のように(?)暗殺の魔の手が襲い掛かる、ついでに超級の咒式士のニドヴォルグ(女性)からも復讐と称して襲われるよ!
何度か死にかかるが、陰謀劇の最後でモルディーン子飼いの十二翼将(よくしょう)の内の3人と戦うことに。
これでも下っ端のほう。後に出てくるが、中位から上位の翼将は個人で小国を潰せるか潰したかくらいのやつら。に、人間じゃねー(笑)。
復讐鬼ニドヴォルグの正体を暴き、ついに生き延びることに成功したガユスとギギナ。
モルディーンからは賞品代わりとして赤色の宝石が嵌(は)め込まれた精緻な螺鈿(らでん)彫りの指輪(宙界の瞳、ちゅうかいのひとみ、という秘宝)を渡される。
これまた災厄を呼び寄せるキー・アイテムになります。ガユスが所有する(嵌める)ことに。
◎感想など
最初はラボさんの作品に不慣れだったためか、10回ぐらい読み返して、ようやく話がつかめました(当時読んでいたのは旧版、スニーカー版ですが)。
さまざまなオリジナルの設定が出てきて、皮肉や悪口もキレッキレ。
まあ、人に簡単に死ねというのはいただけませんが、ガユスとギギナ同士の範囲内ならいいのかな。
何といっても咒式のかっこよさ。
『アイニ』の爆破から『バー・エルク』の筋力強化、復讐鬼ニドヴォルグの重力系咒式など。1巻だけでもこれでもかとかっこいいのが出てきます。
陰謀劇は少し面倒ですが、別に複雑すぎるわけではないので、深読みせずにそのまま読むといいと思います。
「ああ、そういうことだったのね」という合点がいく時が必ず来るはずです。