【書評】フォン・ノイマンの生涯
フォン・ノイマンの生涯 (朝日選書) 著:ノーマン マクレイ
◎この本について
『火星人』、『悪魔の頭脳』などの異名を持つ天才、ジョン・フォン・ノイマンの伝記です。
天才エピソードがこれでもかと登場し、嫉妬深い人は読めないんじゃないのかなー、と思うような1冊です。
自分は天才大好き人間なので、お気に入りの人物です。
他の天才たちのエピソードの散りばめられていますので、参考程度に読むといいかもしれません。
天才エピソードに関してはWikipediaその他によく載っているので、個人的に好きだった項目を載せていきたいと思います。
◎ノーバート・ウィーナーについて
ノーバート・ウィーナーはサイバネティクスなどを提唱した天才で、14歳で大学を卒業しています。
ノイマンと違って、親の教育には恵まれなかったとされます。
ある意味英才教育は受けていたのですが、父親が猛烈に厳しく、一つでも数学の間違いをしようものなら悪鬼の形相で叱りつけた、などの話があります。
そんな子供時代のせいか、頭は切れても心は晩年までろくに成長しなかった、と評されています。
ノイマンはウィーナーの才能に心酔することもあったそうですが、ウィーナーの研究『サイバネティクス』についてノイマンが「あなたの方向はある面で間違いではないか」、と長い手紙で指摘したところ、ウィーナーは猛烈に怒って友人関係は一方的に無くなってしまったそうです。
◎ノイマンの能力について
○性格
人間的な魅力は高かったものの、どうしても頭が良すぎて変人扱いされることはあったようです。
子供時代も皆から好かれようと努力し、知識をひけらかしたり、他人を見下すようなことはなかったそうです。
それでも「どうしても一緒にはなれなかった」と書かれています。
ちなみに、運動はからきし駄目で、子供時代の学校(ギムナジウム)の科目では、体育・音楽・習字だけは落第スレスレだったそうです。
総合では首席だったそうですが。
○暗算・計算力
ノイマンは子供の頃に友人のウィグナー(こちらは後にノーベル物理学賞を受賞した科学者になります)から暗算の見世物の話をされて、自分も試してみよう、ということになりました。
ウィグナーに適当な数を選んでもらい、暗算してみる。数分後にほとんど合っていた答えを出した(少しは間違っていた)、とのこと。
このように、ノイマンは特別極端に暗算が得意だったわけではありません。
ただ、「あれこれ工夫の末、数学の定数をいくつも覚えて代数の公式を使えば途方もない計算ができると分かり、それを実行した」ということらしいです。
単純な計算の暗算ならノイマンより得意な人は(探せば)多いらしいのですが、非常に複雑で込み入った計算となると、そうそう右に出るものは居ない、といったところですかね。
○記憶力
自分の興味のある分野に関しては大変な記憶力を発揮したそうです。
例として、分厚い世界史の本を一字一句間違えず覚えていたり、『二都物語』(小説)や百科事典の好きだった項目も全て暗唱できたそうです。
少なくとも、学校の勉強では苦労はなさそうです。実際、どの学校や大学でも最優秀(か、それクラス)の成績で卒業しています。
○独創性(オリジナリティー)
独創性というよりは今存在する超難問を解いたり、解く道筋を示したりするのが得意だった人だと言えます。
応用(実社会に応用する)数学や物理学で砲弾の弾道を予測したり、原子爆弾の製造に必要な緻密な計算を行ったりしました。
他にもゲーム理論を作ったり、地球上で稼働するほとんどのコンピュータは『ノイマン型コンピュータ』と呼ばれていますね。
経済学にも首を突っ込み、数学的な基礎づけをおこなったりしたそうです。ノーベル賞を受賞していないのはたまたま、あるいはやっていることが高度すぎて理解され辛かったか、それとも受賞する前に53歳で亡くなってしまったからなのか……。
けっこう細々(こまごま)とした功績が多いような気がします。何か一つ、ドン! とした功績を上げれば簡単に取っていたような気がしますが。自分も理解していないだけで十分上げている?。
多分そのタネはたくさんあったけど、成果を上げて発表する前に、核実験の放射能によりガンで亡くなった、というところなのかな。
◎まとめ
世界最高峰の頭脳について細かく書かれた良書です。
フィクションなどである程度リアルな天才を描きたければ参考にするのも良いと思います。それでもチートキャラとか言われそうですが。実在の人物ですよ!